目に視えない私と目が見えない彼
「だって、お兄ちゃん、未蘭さんが幽霊って気付いてないじゃん。このままお兄ちゃんの前だけは生きてる人として接すればいいよ」

「……でも、」

杏子ちゃんの提案に即答できないのは、これ以上来衣先輩を傷つけたくなかった。それに私自身も嘘をついている罪悪感が募り心も苦しかった。

「じゃあ、『幽霊です。今まで生きてる人のふりして近づいてごめんなさい』とでも言えば?未蘭さんの目的はお兄ちゃんを助けることでしょ?だったら、嘘の一つや二つ、ついたって気にしなきゃいい」

その言葉に見事に論された。杏子ちゃんの言うことはごもっともで、納得しかできなかった。本当に小学生だろうか?一つの疑問が大きくなった。

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