目に視えない私と目が見えない彼

「未蘭ちゃん、通っていた学校の名前は?」

「桜ヶ丘高校です」

「じゃあ、桜ヶ丘高校に担当を割り振るわね」

「・・・・ありがとう、ございます」


まだ全部把握できたわけではないけれど、とりあえずお礼を言った。


「注意事項を伝えとくわね。
『人に存在がバレてはいけない』
『担当以外の人を助けてはいけない』」


「担当の人以外を助けてはいけない?・・・目の前で危険な目に遭いそうでもですか?」

「残念ながら・・・・・・目の前で担当以外の人が危険な状況でも、助けてしまうことはタブーよ」

「なんでですか?」

「ルールだから。ここは細かい理由なんて考えないで、"ルールだから"と割り切ってちょうだい」

「担当じゃない他の誰かが、死にそうな危険な目にあってても助けてはダメって事ですか?」

「残念ながら、そういうこと」

「もし、ルールを破ってしまったら・・・・・?」

「私が知ってる中では、ルールを破った人は見た事ないわね。守護霊代行(しゅごれいだいこう)に入る人は、善人で優等生ばっかりだから。みんなルール守ってて破った人は出てきてないのかな」

「・・・・・そっか」


担当以外の人は危険な目にあってても見過ごせってことか。ルールだとわかっても、なんだかやるせない気持ちになってしまう。


「他の人を助けたくなる場面は、出てきてしまうと思うけど全員助けてたらキリがないのよ。そこは、割り切って、としか言えないわ」


腑に落ちないといった表情で、小さく頭を振った。その表情から、楓さんも私と同じ気持ちなんだとわかった。


「最後に質問していいですか。私達って、何者ですか?天使?幽霊?」


「・・・・・・どちらかといえば幽霊、かな」


どこか遠くの方を見上げて言ったので、楓さんの表情は見えなくて、その横顔もどこか悲しげにみえた。

幽霊か。言葉だけでは信じられないけど、目の前で起こっている出来事が、紛れもない事実なのだと感じた。
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