目に視えない私と目が見えない彼
好奇心に勝てなかった私は、家の壁を通り抜けて外へ出た。


スッと壁を通り抜けるだけで、こんなに簡単に外に出れるなんて、幽霊って便利だ。


外は一歩踏み出すと、車のライトやビルの灯りが街を明るく照らしていた。

夜に一人で歩くなんて、なんだか悪いことをしているみたいで、ちょっとだけわくわくしちゃう。軽い足取りのまま、人通りの多い大通りを抜けて路地に入る。


1本小道に入るだけで、大通りの煌びやかな街とは違い、あまりに静かで違う街に来たようだった。街灯がポツポツと照らしてる道を私はゆっくり歩いていた。

こうやって街を歩いていると、自分が死んだなんて思えないなあ。



彼と出会ったのは
そんな静かな夜だった。

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