契約結婚のはずが、御曹司は一途な愛を抑えきれない
第五章 省吾の優しさに惹かれて
LINEは終わった。

省吾さん、出かけなかったんだ。

ちょっと嬉しいと思う自分がいた。

駅に着くと、省吾さんは車で迎えにきてくれた。

「ミク、おかえり」

「ただいま戻りました、一晩留守にしてすみませんでした」

「全然大丈夫だよ、これから出かけよう」

ミクは省吾に促されて車に乗り込んだ。

車は発進した。

「どこに行くんですか」

「どこでもいいよ、ミクは行きたいところある?」

ミクはずっと好きな人と海に行ってみたかったのだ。

「海に行ってみたい」この言葉を言えなかった。

ミクにとってハードルが高い言葉である。

「海でも見に行くか」

省吾の言葉に驚きを隠せなかった。

だって、私の願いを感じ取ってくれたかと思った。

まさかね、ただの偶然だよね。

それでもミクは嬉しかった。

満面の笑みで頷いた。

「なんだ、そんなに海に行きたかったのか、それならそうと言ってくれ、
海くらいいつでも連れて行くよ」

省吾は満足げに微笑んだ。

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