契約結婚のはずが、御曹司は一途な愛を抑えきれない
ミクのサインが入っている。

「ミク、ミク」

省吾は全ての部屋を探したが、ミクの姿はなかった。

ミクは離婚届を置いて出て行ったのか。

信じられない現状に戸惑いを隠せなかった。

スマホを取り出して、ミクに電話した。

しかし「電源が入っていないためかかりません」とメッセージが流れた。

落ち着け、一体何があったんだ。
自分の行動を振り返ってみる。

いや、ミクは俺との結婚は契約と割り切っているはずだ。

契約をやめたいと思うほどの言動はないと確信していた。

待てよ、俺にとってなんでもないことが、ミクにとってはいやだったことも考えられる。

省吾は冷静に深呼吸をして、離婚届を食い入るように見直した。

涙の跡……

サインの場所に涙の跡を見つけた。

しかも、サインが震えている。

省吾はすぐにピンときた。

そして、省吾の向かった先は、母親の元だった。

「あら、省吾、血相変えてどうしたの?」

「ミクに無理矢理離婚届書かせただろう」

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