幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
コンサートが終わった次の日。
瑛は聖美の屋敷を訪れていた。

結納を1週間後に控え、最終確認を兼ねて会うことになっていた。

リビングで二人でお茶を飲む。

「瑛さん、お仕事の様子はいかがですか?」
「はい。ちょうど昨日大きなイベントが終わりまして、少し落ち着いたところです」
「そうですか。良かったです」
「聖美さんは?短大の卒業式、いかがでしたか?」
「はい。無事に終わりました」
「そうですか。それでは、しばらくのんびり出来ますね」
「いえ、それがそうでもなくて。私、来月からイギリスに留学することにしました」

…は?と瑛は、思わず聖美の顔を見る。

「留学…ですか?どれくらいの期間でしょうか?」
「そうですね、まだはっきりとは決めておりません。あちらの四年制大学に編入することにしまして、卒業するまでは帰国する予定もありません」

瑛は瞬きを繰り返す。

「あの、それは…。結婚の時期も分からないという事でしょうか?」
「結婚につきましては、私から瑛さんにお話したい事がございます」

そう言うと聖美は、カップをテーブルに置き、正面から瑛に向き合った。

「瑛さん。私との結婚を考えてくださり、本当にありがとうございました。とても嬉しく有り難いお話でしたが、私のわがままで結婚は取りやめとさせて頂きたく、お願い申し上げます」

そう言うと深々と頭を下げる。

「え…、あの。それは、イギリスに留学されるからですか?でしたら、帰国されてからでも構いません。何年でもお待ちしております」
「まあ、ありがとうございます。ですが、留学が理由ではありません」
「それでは、なぜ?」
「幸せになれないからです。私も、瑛さんも、そして朱里さんも」

え…と瑛は言葉を失う。

「何が悪いとかではありません。私は瑛さんも朱里さんも大好きです。心から大切な人です。だから、私達三人ともが幸せになれるよう願っています。瑛さん、ご自分の幸せが何かを見つけてくださいね。私も、自分の力で必ず幸せになってみせます」

でもまずは、朱里さんみたいにキラキラした素敵な女性を目指します、と聖美は笑った。

その笑顔は、いつものうつむき加減ではなく、真っ直ぐに前を見据えた輝くような笑顔だった。
< 123 / 200 >

この作品をシェア

pagetop