幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
第二十章 二人の懐かしい関係
朝になり、1階の広間に行くと既に大勢の人が集まって賑やかに朝食を食べていた。

「あ、桐生さん、栗田さん。おはようございます。良く眠れましたか?」

長島が手招きして声をかけてくれる。

「おはようございます。はい、お陰様でぐっすり」

結局ここはどなたの宿?なぜ皆さんいつもここに集まるの?と思いつつ、朱里と瑛は長島の正面に座り、食事しながら打ち合わせを進めた。

「では早速、招致する楽団を探してみますね。そのあと、コンサートの日程を決めたいと思います。ご希望はありますか?週末がいいですよね?」
「いえいえー、こちらはいつでも大丈夫です。平日でもみんな、学校や仕事も抜け出しますから」
「ほ、本当ですか?!」

さすが田舎…と朱里は感心する。

部屋に戻って荷造りをしたあと、招致する楽団に心当たりがないか、朱里は東条に電話で聞いてみることにした。

社用のスマートフォンを取り出し、登録していた東条の電話番号をタップした時、横から瑛が手を伸ばしてきた。

「俺が話すよ」
「え?あ、うん」

珍しいなと思いつつ、朱里は瑛の様子を見守る。

「はい、はい。ありがとうございます。早速こちらからもコンタクト取らせて頂きます」

瑛は話しながら、朱里にメモを取る仕草をした。
朱里はメモ帳とボールペンを構える。

「東森芸術文化センター管弦楽団ですね。はい。常任指揮者が赤坂さん。電話番号が…かしこまりました」

朱里はサラサラと、瑛が口にした内容をメモした。

「東条さん、ありがとうございました。非常に助かりました。また改めてお礼に伺います。朝早くからお騒がせ致しました。はい、それでは失礼致します」

通話を終えた瑛は、朱里に頷いてみせる。

「東条さんが紹介してくださった。そこの事務局長や常任指揮者とも昔からの知り合いらしい。きっと賛同して引き受けてくれると思うって。東条さんからも、連絡を入れてくれるそうだ」
「そうなのね!良かったー」
「とりあえず伊丹空港まで戻ろう。着いたらそこで楽団の事務局に電話してみる。もし良い返事をもらえたら、立ち寄って挨拶だけでもしていきたいな」
「はい!了解です」

朱里はテキパキと指示を出す瑛に、にっこりと微笑んだ。
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