幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
「はい、いいね。みんな一生懸命練習してくれたのかな?」

指揮棒を下ろして赤坂は笑顔で尋ねる。
子ども達は照れたような笑みを浮かべた。

「凄く一生懸命吹いてくれたね。間違えないように、テンポがズレないようにって真剣だった。でもね、そんなこと考えなくていいよ」

子ども達は、え?と拍子抜けしたような顔になる。

「この町ってどんな町なの?」

ふいに赤坂が、オーボエの子に尋ねる。

「えっと、もの凄い田舎です。田んぼと畑と山しかなくて、コンビニとかレストランもありません」
「へえー、それで?」

今度はフルートの子に顔を向けて聞く。

「あの、人も少ないので、みんな顔見知りです。小さい子もおじいちゃんおばあちゃんも。誰とでも話すし、みんな仲がいいです」
「なるほど。それから?」

トランペットの子が答える。

「空気が美味しくて、野菜や水も新鮮です」
「あと、景色が綺麗です。特に夕焼けが」
「そうそう!山に沈む夕焼けを見ながら、この曲をみんなで聴くんです」

次々と話し出す子ども達に、赤坂はにこにこ頷く。

「良い所だねえ。君達の大事な故郷なんだね」
「はい!大人になっても、この景色は絶対忘れません」
「そうか。それなら、その想いを込めて演奏しなさい。ここの景色を表現出来るのは君達だけだよ。他の楽団員では無理なんだ。上手い下手とかは関係ない。君達の心の中にある故郷を思い浮かべながら吹いてみなさい。聴いてくれる人達に、こんなに良い所なんだよ、と伝えるつもりでね」
「はい!」

子ども達は笑顔で頷いた。
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