幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
第十四章 クリスマスコンサート
「やあやあみんな。メリークリスマース!」

サンタに扮した奏が、白い大きな袋を抱えて客席の前に現れる。

「わあ、サンタさんだー」

早速子ども達の可愛い声が上がった。

「みんな、良い子にしてたかな?」
「うん!」
「そうかそうか。それならサンタさんがプレゼントを配らないとな。おーい!トナカイー!あれ?いないなあ。みんな、トナカイ見た?」
「ううん、見てなーい」

奏サンタは、仕方ないなーと言って、白い袋からスレイベルを取り出した。

「よし、これでトナカイを呼んでみよう!来るかなー?」

そしてシャンシャンとスレイベルを鳴らし始める。

子ども達が注目する中、トナカイに扮した光一が現れた。

だが、可愛げもなくヨタヨタとやって来て、子ども達は、ええー?!と笑い声を上げる。

光一トナカイは、そのまま椅子に座ると居眠りを始めた。

「寝ちゃったよー?どうするのー?」

子ども達が奏サンタに聞く。

「困ったなー。おい、起きろ!みんながプレゼントを待っているんだぞ?」

奏サンタが揺すると、光一トナカイはわざとプイッとあしらった。

あはは!と子ども達はおもしろそうに笑う。

「仕方ない。じゃあまずはみんなに、音楽をプレゼントしようかの。ほーら!サンタさんが楽器を持って来たぞ」

奏サンタが白い袋を広げると、中からチェロが現れた。

「うわー、凄い!」
「凄いじゃろ?これからサンタさんがみんなの知っている曲を演奏するから、よーく聴いていてね」

奏サンタがおもむろにスレイベルを高く掲げる。

シャンシャンと鳴り始めたベルを2小節間聴いてから、朱里と美園が大きなクリスマスツリーの後ろから現れて、ヴァイオリンで『ジングルベル』を弾き始める。

うあ!と客席から歓声が上がり、人々は手拍子と共に歌い出す。

サンタ帽をかぶり、赤いスカートと白いニット姿の朱里と美園は、左右に分かれて、客席の近くを歩きながら笑顔で演奏する。

奏サンタがチェロを弾く手を止めて光一トナカイを揺すると、はっ!と起き上がった光一トナカイが、椅子の後ろからヴィオラを取り出して弾き始めた。

「ああー、トナカイさんも!」

子ども達は光一トナカイを指差して笑う。
が、サビの部分になると光一トナカイはヴィオラを置き、スレイベルを鳴らし始めた。

意外な行動に、また子ども達は笑い出す。

朱里も歌いながら、客席のすぐ横を歩いて演奏する。

「あーちゃー!」

優が笑いかけてくれ、朱里も笑顔で頷いた。

やがて朱里と美園も前に戻り、四人揃ってジングルベルを弾き終えた。

大きな拍手が起こる。
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