Lost at sea〜不器用御曹司の密かな蜜愛〜
 あぁ、なんて気持ちがいいんだろう……湯の中で手足を伸ばし、湯船に頭をもたれかかるとそっと目を閉じた。

 一人でのんびり入るお風呂なんていつぶりだろう。お風呂から出た後、まーちゃんの服を着せるという重労働もない。何も考えずにボーッと浸かると、お風呂はこんなにも癒しの空間になるんだ。

 空を見上げれば、少しずつ輝き出した星が瞬く。久しぶりにゆったりとした時間の流れを感じ、六花はほうっと小さく息を吐いた。

 その時だった。突然脱衣所の扉が開き、裸になった宗吾が入ってきたのだ。六花の体は硬直し、口をパクパクさせる。

「な、なんで……! 覗かないって約束したじゃない!」

 体の前で両腕をクロスさせ、体育座りのように足を縮める。どうしていいかわからず宗吾に向かって怒るが、彼はニヤッと笑いながら勢いよくお湯の中に体を沈めた。

「だから覗いてないだろ?」
「入る方がタチが悪いわ。信じられない」

 そう言いながら、目のやり場に困ってしまう。先ほどキスをした時に一度スイッチを入れられてしまったからか、宗吾の裸を見るだけで体が疼く。

「早く出ていってよ。約束したじゃない、私がその気にならなければしないって」

 六花は宗吾を睨みつける。しかし宗吾は全く意にも介さず、不敵な笑みを浮かべて六花を見つめていた。

「言った。だから六花がその気になるよう誘惑しようと思ってさ」
「はぁっ? 何よそれ。意味がわからない……」

 今立ち上がれば裸体を晒すことになる。でも誘惑すると言っている宗吾とこのまま一緒に同じ湯の中にいれば、一体何をされるかわからない。

 浴槽に背中をピタリとくっつけて困惑している六花に、宗吾はゆっくりと距離を詰めていく。

 ダメよ、もう限界ーー立ちあがろうとした六花だったが、宗吾に手を掴まれ湯の中に引き戻されてしまう。

 そして宗吾は真っ直ぐに六花の瞳を見つめると、彼女の顎に指をかけて自分の方に向かせ、そっとキスをした。
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