幼なじみ社長は私を姫と呼んで溺愛しています
そしてゴールデンウィーク最終日にカフェで会った、保育園からの友人、沙彩(さあや)には…

まず口に含んだ飲みかけのコーヒーを顔に吹きかけられた。

いや、わざとじゃない。そのくらいびっくりしたということだ。

「ごめんっちょっとゴホッ、あまりにびっくりゴホッゴホッ」

むせながらもおしぼりで私の顔を拭おうとする。

「ちょっと待って沙彩。お化粧落ちるっ」

「でもコーヒー落とさないと」

「なんか悲惨な顔になる気がするっ」

千紘を知っている他の友達にはすでにメールで伝えてあったけど、リアクションを見たくて沙彩には黙っていたのだ。

リアクション女王にコーヒーを飲んでいる最中に言うべきではなかった、と後悔した。

濃い目の色のブラウスを着ていてよかった。これがホワイトのブラウスとかだったら、コーヒー模様のせいで電車では帰れなくなる。

いやでもだいぶコーヒーくさい。

「千紘くんかあ…懐かしいな。
って個人的な思い出は別にあんまりないんだけどさ。
学年違うし」

「そうだね。公園で一緒になるくらいだったよね」

「でも遥を姫って呼んでたのは強烈に覚えてる。
バカみたいだよね、小学生にもなって」

沙彩は思い出したようにケラケラと笑いだす。

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