幼なじみ社長は私を姫と呼んで溺愛しています
「姫、今日は何もしないから、抱き合って眠ろう」

「うん」

やさしい千紘の気遣いに心があったかくなる。

千紘は私の額と頬にやさしいキスを落とし、それから唇にキスをした。

…だけどそのキスはそこで終わらず、それどころかどんどん深くなる。

「…ち、ひろっ」

胸を押し返したら、やっと千紘は唇を離した。

「ごめん。今日の姫がいつもよりさらにかわいくて、帰って来たら抱く気満々だったから…」

うん。ドレス姿を見た時の千紘の反応で、なんとなくそんな気はしていたけど。

今日も過労死コースかなって。

「…ねえ千紘。
千紘も誰かと付き合ったことあるんでしょう?」

千紘はきょとんとして私を見下ろす。

「疑似恋愛はしたことがあるけど、付き合った相手はいない」

「疑似恋愛って何よ」

「経験値がゼロでキスが下手くそじゃ姫には釣り合わない。
だからレクチャーを受けたことはある。
アメリカにいた時だが、キスの先生だ」

レクチャー?キスの先生?ますます意味がわからない。

「ちなみにそれ以上のことはAVを見て研究を重ねた。
だから俺も姫と同じく初体験だった」

AVって多分、普通のカップルのそれより過激なんじゃ…

だからあんなに激しいのか。納得してしまう自分。

「…あのね?私もキス以上のことは初めてだったから何とも言えないんだけど、多分AVって大袈裟なんだよ。
設定も…ほら、制服の子を脱がしたりとか…お医者さんが看護師さんを、とかそういうのでしょ?」

「姫というキーワードの設定はなかなかなくて、女王様のものを観てみたんだが…
俺は靴を舐める趣味はないし、責められるよりも責め」

「あーもういいっ!」



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