幼なじみ社長は私を姫と呼んで溺愛しています
「そういえば、香坂さんは設立当初からこの会社を支えてくださっているってパーティーの時おっしゃってましたよね」

「ええ。社長とは大学時代に同じゼミで知り合ったのですが、姫…いえ、遥さんの話をよくされていましたよ。
いつか姫…いえ遥さんを迎えに行くためにふさわしい男になりたいと。
そんな社長の強い熱意に打たれて、私もこの会社に尽力したいと思ったんです」

とてもいい話をしてくれているのだけど、どうもうまく入ってこないし感動が薄い。

「…あの、香坂さん、もう『遥』じゃなくて『姫』でいいです…」

「そうですか?すみません。
学生時代から姫というワードを聞きすぎていて、なかなか抜けなくて」

「ははは」

どれだけ私の話をしているんだあの人は。

これはきっと渡米していた時も言っていただろう。

その場合…『プリンセス』になるんだろうか。

千紘のせいで、日本人が馬鹿っぽいイメージになっていないことを切に願う。

「社長と姫さんが幸せになって本当によかったです」

感慨深そうに微笑んでくれる香坂さんに胸が熱くなった。

姫にさん付けという言い方は引っかかるけど。

「香坂さん、千紘を支えてくれてありがとうございます。
これからもよろしくお願いします」

「いえ、こちらこそ今後ともよろしくお願いします」

お互いにぺこりと頭を下げた。


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