香らない恋もある。
 目の前で、ガラガラと教室が崩れていく気がした。

 蓮の笑顔も、お弁当を一緒に食べるのも、デートの誘いも。
 何もかもが目の前で落として壊れるガラス細工のように、ぱりん、ぱりんと割れていく。

 その破片が、わたしの体中に突き刺さるみたいに全身が痛い。
 居ても立っても居られなくなって、わたしはその場を走り去った。


 その日は、どうやって帰ったのか覚えていない。

 気づいたらわたしは自室のベッドにもぐりこんでいて、夜になるまで眠っていた。
 起きたら夢だったらいいのに。
 そう思いながら、わたしは枕に顔を埋める。

 蓮が罰ゲームで告白なんて、そんな幼稚で人の心をもてあそぶようなことをするはずがない。
 そんなふうに思う一方で、蓮から恋の香りがしなかったのは、罰ゲームで告白をしたからなんだ、と納得をしてしまう。

 好きじゃないんだ。
 わたしのことなんて、何とも思ってないんだ。

 そうやって考えるたびに、胸がズキズキと痛んで涙が自然と溢れてくる。

 それに、やけに喉が痛い。
 失恋って喉も痛くなるもんだっけ。
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