香らない恋もある。

7.恋の香り

「はい、ばかやろうの登場ですよ」
 そういいながらトンネルを覗いたのは、蓮だった。

 それと同時に、外から甘くて優しい香りがしていることに気づく。

 どこか懐かしい香りだ。
 これは、恋の香り。

 蓮は小さくため息をついてからいう。

「おれが最近、ここのトンネルの話をしたからまさかと思ったけど」

「なんで探しにきたのよ」

「そんなの好きだからに決まってるだろ!」

「もういいよ、その演技」

「だーかーら! 罰ゲームってのは、『好きな子に告白をする』って内容だったんだよ!」

 蓮の言葉に、わたしは頭がついていかない。

「からかうためじゃなく?」

「そんな最低なことするかよ」

 蓮がぷい、とそっぽを向いた。

「だって、さっき知らない女子と話してたし……」

「ああ、あれはおれの友だちのお姉さん。たまたまこの辺を歩いてたから、萌香を見てないか聞いてたんだ」

「そうだったんだ……」

わたしはホッとして、涙が出そうになる。

「おれのこと、どんだけ疑ってたんだよ。ショックだよ」

「ごめんね」

「まあ、おれも突然の告白したし、誤解させるような会話聞かせちゃったからな。おれのほうこそ、ごめん」

蓮はそういうと、「おわびとはいってはなんだけど」となにかを差し出してくる。
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