香らない恋もある。
「え? 今週末?」

 付き合って一週間が経過したある日の朝。
 蓮が、「今週末の土曜日か日曜日どっかひま?」と聞いてきた。

「どっちもひまだよ」

「一緒に遊ぶ友だちとかいないのかよ……」

 蓮が心配そうにわたしを見る。

「紫にも彼氏ができたし、ミホは家族で出かけるみたいだし、遊んでくれる人がいないだけだよ」

「それはそれでかわいそうになる」

「週末の予定聞いたのって、わたしを哀れむためだったの?」

「んなわけねーだろ」

 蓮はそういってから、わざとらしく咳払いをする。
 それからわたしから視線をそらして、もそもそと続けた。

「なんてゆーか、その、デート、みたいな、ものをだな、したいと思いまして」

「あー、いいね!」

「なんだその軽い反応は!」

「じゃあ、『わたしと本当にデートしてくれるの? 本当だよ? ってゆーかもう一生離れないから! くさりでしばって離れないようにする!』のほうがいい?」

「なんだそのヤンデレ」

 蓮はそういうと、笑いだした。
 つぼに入ったらしく、肩を震わせて笑っている。

 この笑顔を偽物だと思えない。
 デートに誘ってくれた気持ちも、疑いたくない。

 だからわたしは、蓮から好かれているって自信を持たなきゃ。
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