Chocolate Lily
「……は?」

ガチャン、という音がして自身の手の自由を奪ってしまった手錠を美麗は呆然と見ていた。美麗だけでなく、自分が連行されると思っていた直人も驚いた様子で順一を見ている。

「太宰さん、これは何の冗談ですか?犯人が目の前にいるのに部下に手錠とか、笑えないですよ」

引き攣った笑みを浮かべながら美麗は言う。だが、順一は淡々と「間違ってない」と返した。

「牧歩美さんを殺害し、守屋さんに罪をなすり付けようとしている真犯人はお前だ」

「証拠!証拠はあるんですか?いくら部下だからって、こんなこと許されませんよ!」

手錠をガチャガチャと音を鳴らし、美麗は大声を上げる。順一はスーツの内ポケットから写真を取り出し、それを美麗に見せた。それは歩美が握っていた花の写真である。

「これが何かわかるか?」

「黒百合と紫陽花ですか?これが何だって言うんです?死ぬ間際に被害者が偶然掴んだものなんでしょう?」

「最初は俺もそう思ったさ。でも、これは被害者が残したダイイングメッセージだったんだよ」

「は?ダイイングメッセージ?私の苗字に黒が入っているからとか、そんな理由ですか?」
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