全治三ヵ月
４
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「わ！すごいじゃない」

私を出迎えた悠は、松葉杖なしで立っている。

術後一ヵ月の入院を経て家に帰ってきた悠は、これまで家の中でも松葉杖なしでは移動できず、週に一度リハビリに通っていた。

いつの間にかリハビリの成果もあって、一人で立てるようになっていたんだ。

「がんばっただろ？リハビリの先生にもあれだけの複雑骨折でこんなに早く復活するなんてすごい！ってさ」

短パンから出た彼の右足は、がちがちに固定されていたギプスも外れ、目を覆いたくなるようなケロイド状の術傷がひざ下に三十センチ程這っている。

「ギプスもとれたんだ」

「ああ、ようやく右足の風通しもよくなったよ」

努めて明るく笑う悠は、床を確認しながらゆっくりとリビングに向かう。

「すぐ晩御飯作るね」

彼がソファーに腰を下ろすのを見届けると、買い物バッグを持ち上げキッチンに入る。

……ふぅ。

じんわりにじんだ額の汗を手の甲で拭い、荷物を下ろすと一瞬体がふらついた。

仕事以外の疲れが私を襲ってくる。

悠はこんなにも頑張っているのに、私は今の職場で悠のことを少しも思い出すことなく楽しくやってるなんて。

たった二カ月の間に、初めてが多すぎて、私の一部が私でない何かに侵食されていくような。

悠と職場の挟間で自分の居場所が揺らいでいた。






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