非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~

疑い

息を切らした倉田が病室に到着したのは、それから1時間程経ってのことだった。

倉田はよほど慌てていたのか、胸元にはピンマイクをつけたままだ。
ステージの上では落ち着いているように見えたが、やはり動揺していたのは倉田も同じだったようだ。

倉田は穏やかに談笑する湊斗の姿を見た途端、拍子抜けしたように息を吐くと、ベッドの隣にある応接セットのソファに座り込んだ。

「大丈夫ですか?」

一毬がコップに注いだ冷たいお茶を、倉田の前に置きながら声をかける。
倉田は一気にお茶を飲み干すと、やっといつもの笑顔を見せた。

「遼、お前慌てすぎだろ。そのピンマイク、ホテルの備品だからな。後でちゃんと返しとけよ」
「全く、誰のせいだと思ってるんだよ」

憎まれ口をたたきながらも、倉田はほっとしたような顔をしている。

「発表会は無事に終わったようですね。先ほど、研究室の方からも連絡が入りました」

牧の声に軽く相槌をうつと、倉田は湊斗をまっすぐに見つめた。
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