非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
「湊斗の決意、ちゃんと伝えてきたから」
「あぁ。遼ならわかってもらえると思ってた」
「たぶん今頃みんな大騒ぎだろうなぁ。俺も誰にも捕まらないように逃げてきたし」
「……みたいだな」

首をすくめる倉田に、湊斗は自分のスマートフォンを指さす。

「さっきから鳴りっぱなしだ」

湊斗は、電話に出る気などない様子で倉田と顔を見合わせると、あははと声を出して笑った。

スマートフォンは着信を告げる通知がいくつもされ、さらに今も新たな着信を告げている。
やはり倉田が“あの宣言”をしたことで、社内外問わず大騒動になっているようだ。

「ところで、怪我の具合は平気なの? やっぱり狙いは湊斗のパソコン?」
「だろうな。明らかに待ち伏せされてた感じだ」
「まじかよ……。よく奪われなかったな」
「相手も不慣れな感じはあったからな。まぁでも、奪われたとしても、すぐには開けないだろうけど……」

湊斗はそう言うと、ちらっと一毬の顔を伺う。
< 164 / 268 >

この作品をシェア

pagetop