非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
そんな自分の軽率な行動で、湊斗の心を傷つけただけでなく、こうして危険な目に合わせてしまったのだとしたら、自分はどうしたらよいのだろう。
一毬はしばらく逡巡した後、湊斗の「一毬?」という二度目の問いかけで顔を上げた。

「一度だけ、楠木さんにマンションの前まで、送ってもらったことがあります。それと、楠木さんが、業務とは関係ない資料を作成していたことも……」
「え? つまり一毬ちゃんは、楠木くんが怪しいって思うってこと?」
「でもそれだけで、楠木さんを疑うというのは……」

みんな眉をひそめている。
一毬は泣きそうな顔で、湊斗の顔を見つめた。

「楠木さんは……私と湊斗さんが一緒に住んでいることに、気がついていました……」

一毬の言葉に、倉田と牧は驚いた顔をすると「え?!」と声を上げる。
湊斗は腕を組むと静かに目を閉じた。

どれだけ時間が経っただろう。
湊斗はゆっくりと目を開けると、表情を変えずに目線を牧に移す。

「楠木を調べろ」

湊斗の声は静かな病室に、ドキッとするほど厳しく響いた。
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