非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~

訪問者

「一毬?」

ベッドの脇でうつむいて座っている一毬の手を、湊斗の大きな手がそっと包む。
一毬はビクッと身体を揺らすと、泣きそうな顔を上げた。

あの後、牧と倉田はすぐに会社に戻ると言い残し、飛び出すように出て行った。
湊斗と二人きりになった病室で、一毬は自分を責めるように動けなくなっていたのだ。

「何も気にしなくていい」

湊斗の声は穏やかだ。

「でも……」

一毬は再びうつむくと、重ねられた湊斗の手をじっと見つめる。

「一毬のことだ。自分を責めてるんだろ? まだ楠木が事件に関わっていると決まったわけじゃない。それに、俺は大丈夫だ。パソコンだって無事だった」

いつだって湊斗は一毬に優しい。
そんな湊斗を支える一人になりたかったのに。

「でも……。私はもっと、注意するべきだったんです」

一毬の消え入るような声に、湊斗は小さく首を振る。

「タクシーに乗る前に言っただろ? そのおかげで俺は決断できたって。楠木のことは調べればわかることだ。それを見て、判断する。ただそれだけだ」
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