非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~【コミカライズ原作】
 そして手で顔を覆い、声をころして泣く一毬の脇に片膝をついて座った。

「一毬……」

 湊斗は一毬の震える手を取ると、そっと自分の手に乗せた。

「湊斗さん……?」

 手のひらから伝わる熱に、一毬が戸惑ったまま目線を向けると、湊斗は揺れる瞳で一毬をじっと見つめている。


「……それなのに」

 やけに低い湊斗の声が耳元に響き、一毬の心臓は急にドキドキと駆け足で叩きだす。

 一毬は思わず息を止めた。


「それなのに、一毬。俺は、お前を愛してしまった」


 突然、湊斗から紡ぎ出された愛の言葉に、まるで世界が一瞬で止まったかのように感じる。

 一毬は自分の耳が信じられずに、ただただその場で、息をするのも忘れて呆然としていた。


 ――湊斗さんが……私を……?


 それは願っても叶わないと、自分に言い聞かせていた言葉。

 今までさんざん隣で寝ていても、一ミリも手を出されなかったのだから。

 それでも確かに感じるのは、握られた手のひらから伝わる湊斗の熱だった。
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