非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~【コミカライズ原作】
 湊斗は静かに顔を上げると、菱山の目を正面から見据える。

「いえ、本日は、正式に先日の発表内容で開発を進めることを、ご報告に参りました」

 湊斗の言葉に菱山は目を細める。

「おかしいですね。君は自分が言っていることの意味が、お分かりですかな?」

「製品を作るのは弊社です。たとえ支援していただいているとしても、開発の方向性の決定権は弊社にあります」

「ほう。ならばうちが、支援を打ち切ると言ったら?」

「それはそれで構いません」

 その時、突然菱山が目の前のテーブルを、ドンっと拳で叩いた。

「ひっ」

 使用人の女性が悲鳴を上げる。

 女性の手元が狂い、注いでいた紅茶がテーブルにバシャリとこぼれた。

「も、も、申し訳ございませんっ」

 紅茶は大きな水たまりを作ると、そのままテーブルを伝い絨毯にひたひたと零れていく。

 女性が慌ててテーブルを拭くさまを、湊斗は静かに見つめていた。

 しばらくして、落ち着きを取り戻した菱山が口を開く。
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