非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
ドキドキと心臓の音が早くなる。

湊斗が長い腕で寝室の扉を押し開けた瞬間、ベルガモットの香りが鼻先をかすめた。
いつも心地よい眠りを誘うベッドが、今夜だけはやけに魅惑的に見える。

湊斗は一毬の身体を優しくベッドに横たえると、覆いかぶさるようにして一毬を見下ろした。
下から見上げた湊斗の瞳は、あの日以上に熱を帯びている。

ずっと愛されたいと願っていたこの場所で、今一毬の目の前の瞳には、自分だけが映っていた。

「一毬、愛してる」

湊斗の声が、身体の芯を揺さぶる。

「私も……愛しています」

次第に潤んでくる瞳でそう言った一毬に、湊斗は顔をほころばせると、優しく唇を覆った。

初めてのキスに、頭が真っ白になった一毬は、息継ぎもままならない。
湊斗はそんな一毬を愛しそうに見つめると、優しく頬に触れた。

「俺にゆだねて……」

今まで知らなかった、湊斗の艶やかな声。
一毬はすべてが吸い込まれそうになりながら、小さくうなずいた。

柑橘系の香りに混ざり合って漂う、湊斗のほのかに甘い香り。
はじめは浅く、次第に深く重なりながら、その香りは一毬を夢の中に(いざな)ってゆく。

ダウンライトの淡い光の中、お互いを求め続ける二人の影だけが、いつまでも静かに揺れていた。
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