非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~

犯人の存在

「さあ、ここからが勝負だ。どうやって製品化を進めるか……」

研究室に湊斗の低い声が響いた。

倉田は渋い顔つきで椅子に腰かけたまま、じっと腕を組んでいる。
一毬はそんな湊斗と倉田の顔を交互に見つめた。

菱山からの支援がなくなった今、開発の方向性は一からやり直しになる。
湊斗の目指す機器の製造のためには、早急に対策を練ることが求められた。

「ひとつ、聞いていいかな……」

倉田がおもむろに口を開く。
湊斗は鋭い視線を倉田に向けた。

「さっきから、気になってたんだけど……」

倉田は立ち上がると、ばっと一毬と湊斗の手元を指さした。

「なんでずっと、手を繋いでるのよ?!」

倉田の悲鳴にも似た叫び声に、一毬は顔を真っ赤にすると慌てて湊斗から離れようとする。
しかし湊斗はそれを許さず、また一毬をぐっと引き寄せた。

湊斗の“眠りの呪い”が解けて、やっと一毬は湊斗と心も身体も通じ合えた。
そして朝日で目が覚めた一毬は、初めて隣で眠る湊斗の姿を見つけたのだ。
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