非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~

甘い時間

一毬はキッチンで、揚げたてのツイストドーナツにたっぷりのグラニュー糖をまぶす。
それをお気に入りの花柄の皿に盛りつけると、リビングのローテーブルに置いた。

あれから数か月が過ぎていた。
ウイルス騒動は、矢島の逮捕という形で終結した。

矢島は課長補佐という立場でありながら、ライバル社と繋がり、金を受け取って犯行に及んだそうだ。
当初はプレス発表会の資料を削除することが目的だったが、湊斗が自宅にデータを置いていると知り、焦ってパソコンを奪おうという暴挙に出たらしい。

矢島の事件は、社内にかなりの衝撃を与えたが、時は流れて今ではみんな何事もなかったかのように過ごしている。

今考えればあの事件をきっかけとして、一毬や湊斗を取り巻く状況が大きく変わり出した。

その結果、湊斗は“眠りの呪い”から覚め、会社も新たな製品作りへと進むことができるようになったのだから、ライバル社や矢島にとっては皮肉な結果になったのだろう。
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