非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
そして一毬自身も、湊斗の愛を求めて悩んだ日々を経て、今は心が満たされた時間を過ごしている。


一毬はコーヒーの入ったマグカップを二つ持つと、リビングのソファに腰かけた。

「いい香りだ」

湊斗も窓際のデスクで作業していたノートパソコンを閉じると、ソファへとやってきて隣に座る。
ソファは湊斗の重みで沈みこみ、二人の肩は優しく触れ合った。

この週末は、特に出かけるでもなく、のんびりと部屋で過ごしている。
新製品の開発も軌道に乗り、それもあってか湊斗の忙しさは、少し落ち着いているようだ。

あの後、TODOは新しい医療機器の製造のために共同開発企業を募集した。
会社の大小に関わらず、品質のみを重視した選定で、複数社が手を上げたが、そのうちの二社と契約を結ぶことになった。
二社とも大手とは程遠い町工場だったが、その品質には湊斗や倉田もうなるものがあり、今は順調に開発が進んでいる。

一毬はできたてのドーナツを、一つ取ると大きな口でほおばる。
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