非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~【コミカライズ原作】
 湊斗はそっとかがみ込むと、その手に重ねるように自分の手を当てる。

「ここに、いるんだな。俺たちの子どもが」

「はい。でもまだ実感はなくって。つわりとか始まったら、そんな事言ってる余裕もなくなるんですかね」

 えへへと一毬が笑うと、湊斗はお腹に耳を当て、そのままぎゅっと優しく抱きしめた。

 一毬は首を傾げながら、湊斗の様子を覗き込む。


「聞こえるか? お父さんだぞ」

 するとそっとお腹に語りかけるように、湊斗が小さくささやいた。

 一毬は思わず口元に手を当てると、目をまんまるに開く。

 まさか、こんな湊斗の姿が見られるなんて、想像もしていなかった。


「自分で“お父さん”って呼ぶのは、結構恥ずかしいな」

 照れたように頬をピンクに染める湊斗に、一毬はトキメキが抑えきれない。

 湊斗の頬を包み込むように両手で触れると、そのままそっと口づけた。


「私、本当に幸せです」

「俺もだ」

 次第にオレンジ色に変わっていく波の音を聞きながら、二人は何度も愛の言葉をささやき合った。
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