非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~【コミカライズ原作】
 その日の夕食は、民宿に近所の人が集まり、宴会を開いてくれた。

 司や沖村さん、宮脇も家族を連れて来ており、各家庭からの持ち寄りの美味しい島料理に、一毬は頬っぺたが落ちそうになった。


「藤堂さんには、この後まだ仕事してもらうってのに、すみませんね」

 宮脇は豪快に笑いながら、湊斗のグラスにビールを注ぐ。

 この島の風潮なのか、皆穏やかでゆったりとした時間を過ごしている。

 そんな様子がとても新鮮だった。


「司、藤堂さんに都会の話を聞くといい。お前もいずれは、都会に出るんだからな」

 しばらくすると、沖村さんが大きな声で、端っこにちょこんと座って、枝豆を食べている司に声をかけた。

「じいちゃん、うるさい!」

 司は怒鳴り返すと、ふんっとそっぽを向いてしまう。

 島の人たちには、このやり取りは日常茶飯事なようで、誰も気にした様子は見せないが、一毬はどうしても気になってしまい、湊斗とそっと顔を見合わせた。
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