非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~【コミカライズ原作】
 湊斗は司と一毬の肩を抱き寄せると、ぎゅっと力を込める。

 静かな待合室には、温かい優しさに包まれてすすり泣く、司の声だけが響いている。

 そして診察室では、目頭に手をあてながら、声をころして泣く沖村と、宮脇の姿があった。


 沖村さんの容体は安定し、念のため今晩は診療所に泊まることになったため、一毬と湊斗は宿に戻ることにした。

「いやいや、藤堂さんには驚かされましたよ。正直、大企業の社長さんだし、そこまで機器に詳しくはないだろうと思っていたんですが、完全に私の思い違いでしたね」

 宮脇は二人を外まで見送りに出ながら、あははと笑うと大げさに頭をかく。

「いえ、こちらこそ。貴重な現場を拝見させて頂けて、大変参考になりました。自分たちの作った検査機器が、どんな風に現場で活用されているのか、私が目にする機会はほとんどないもので……」

 共に仕事をした二人の顔は、生き生きとしている。


 ――なんだか二人とも素敵だな……。


 一毬は会話を隣で聞きながら、途端に身体にだるさが襲ってくるのを感じていた。


 ――どうしたんだろう……。ものすごく全身が重い……。


 そう思った瞬間、酷い目眩が一毬を襲い、突然視界が真っ暗になる。

「一毬! しっかりしろ」

 薄れる意識の中で、一毬の耳を低く優しい湊斗の声がかすめた気がした。
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