非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~【コミカライズ原作】
「僕、何もできなかった……。じいちゃんが苦しんでるのに、どうしていいか、わかんなかった……」

 うつむいて声をつまらせる司の肩を、一毬がゆっくりと撫でる。

「ちゃんとおじいちゃんを、ここまで連れて来たじゃない。司くんは、立派だったよ」

「でも……!」

 司は再び声を上げて泣きだす。


 その様子を見ていた湊斗が、そっと司の前にしゃがみ込んだ。

「司くんの、もどかしい気持ちはよくわかるよ。君はまだ小さくて成長の途中だからね。でも、君はたくさんの可能性を持ってる。だから勉強するんだ」

「え……?」

 司は真っ赤になった目で、湊斗を見上げる。

「たくさん勉強して、知識を身につけるんだ。それが君の力になる。そしてその力は、いつかきっと大切な人を、愛する人を守る力になる」

「……守る……力?」

 湊斗は大きくうなずくと、優しくほほ笑んだ。

「俺だって散々悩んだよ。子どもの頃だけじゃない、大人になっても悩むし、苦しむんだ。でも学んで身につけた力と、想いを貫く強い心を持っていれば、必ず道は開ける」

 湊斗はそこまで言うと、司の肩を抱く一毬の顔を、愛しそうにじっと見つめた。

「俺はそれを、愛する人に教えてもらった」

 一毬は湊斗の顔を見つめ返す。

 そして、潤む瞳で何度もうなずいた。
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