非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
「はぁ……。無自覚か……。お前の爆睡は、やっぱり次元が違うな……」

湊斗は珍しく肩を落とすと、「俺、行くわ」と片手を上げる。

――ど、どういう事?! まさか、またトンデモナイ迷惑をかけちゃった?!

一毬は慌てて、歩き出した湊斗の背中を追いかけると、スーツの裾をぐいっと引っ張った。

「み、湊斗さん。私、またご迷惑かけちゃったんじゃ……」

一毬の声に湊斗の足がぴたりと止まる。
すると突然湊斗が振り返り、一毬の腰に手を当てぐっと抱き寄せた。
「きゃっ」と軽く悲鳴を上げた一毬のおでこに、湊斗がこつんと自分の額をぶつける。

「ドーナツ! 美味かった!」
「……へ?」

湊斗は一毬の鼻先に向かって、怒ったように言うと、どしどしと足音を鳴らしながら廊下を去っていく。

「え? えぇ?!」

一毬は訳が分からずに、しばらくその場に立ち尽くしていた。
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