非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
「おい、湊斗! 自分で歩けよ!」

すると突然、知らない男性の顔が目の前に現れ、一毬は「ぎゃっ」と声を上げると慌てて扉の隙間に身を隠した。

しばらくしてそっと顔を覗かせると、同じく驚いた顔の男性と目が合う。
湊斗と同い年くらいの背の高い男性は、鼻すじの通った綺麗な顔の目をまん丸に見開いている。

「なんだ、本当にいたんだ……」

そう小さくつぶやいた男性の脇から、今日も頬をピンクに染めた湊斗の顔が見えた。

「湊斗さん」

一毬が駆け寄り抱きかかえると、湊斗はいつものように一毬の肩に手を回した。

今日の湊斗からは、ほのかなアルコールの香りだけが流れてくる。
男性が誰かはわからないが、とりあえず湊斗をベッドに連れて行くのが先だろう。

「すみません。リビングでお待ち下さい」

一毬は男性に声をかけると、湊斗を連れて寝室へと向かう。

「一毬、ただいま……」

湊斗は甘える声を出しながら、ベッドに倒れ込むとすぐにそのままシーツにうずくまった。
< 59 / 268 >

この作品をシェア

pagetop