非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
こんな顔を見せられて、自分が特別じゃないなんて思える人がいるのだろうか。
湊斗の心地よさそうな寝息が聞こえてくるのを確認してから、一毬はそっと寝室の扉を閉じる。

一毬がリビングに戻ると、先ほどの男性が腕を組みながらソファに腰かけていた。
すらりと伸びた長い足が印象的な男性は、ややウェーブがかった茶色い髪の脇から整った横顔をのぞかせている。

「あ、あの、今お茶を入れますので……」

一毬はたどたどしく声を出しながら、急いでキッチンに入る。
背を向けてケトルに水を入れながらも、背中に痛い程の視線をひしひしと感じていた。

一毬が恐る恐る振り返ると、男性はにんまりと口元を引き上げる。

「驚いたよ。まさか湊斗が、部屋に女の子を入れてたとはね。君、最近来たの? 会社の子?」

一毬はまじまじと男性を見つめる。
この男性は誰なのだろう?
口ぶりからして湊斗とは親しそうな様子が伝わってくる。
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