非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
「……湊斗さんの?」
「そう。湊斗はもともと研究者だったからね」

倉田の言葉に一毬は驚いて目を丸くした。

――そうか。だから今でも湊斗さんは、研究に第一線でかかわっているんだ。

一毬は、湊斗の社長としての顔や部屋で見せるプライベートな様子からは想像もできない、研究者としての一面を垣間見た気がしていた。

「苦しんでいる人のために自分の力を使いたいって、それが湊斗の口癖だったな……。湊斗はね、俺から見ても驚くほどに、可能性を持ってる奴なんだよね。だから……」

倉田はそう言うと、いったん口を閉じる。

「……え?」

一毬は不思議に思いながら、倉田の横顔を見つめた。

「だから……研究以外のことが理由で、あいつの可能性をつぶしたくないんだ」
「倉田さん……」

倉田は何かを考えるようにじっとデスクの上に目線を落とす。

その様子を見ながら、一毬は湊斗のことを思っていた。
きっと湊斗は、一毬が想像なんてできないほどの重圧や様々な思惑の渦の中に、身を置いているのだろう。
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