二度目のマリッジリング
もうすぐ四月一日がやって来る。二人分の洗濯物を畳みながら、花園萌音(はなぞのもね)は何度もカレンダーを見てしまった。

「一年の契約だけど、どうなるんだろう……」

萌音は洗濯物を畳む手を止め、自身の左手に嵌められている指輪を見る。シンプルな銀色の指輪は、一般的には愛する人がいる証だ。だが、その指輪を見ても萌音は幸せを感じられない。逆に、これから訪れる未来に対する不安だけが募っていた。

「ただいま」

萌音がカレンダーをまた見てしまっていると、玄関のドアが開く音と、低いテノールが聞こえてくる。萌音は驚いて壁に掛けられている時計を見た。時刻は十六時を過ぎた頃、多くの社会人がまだ働いている時間帯だ。

「お、おかえりなさい!」

萌音は玄関に向かい、家の中に入って来たスーツを着た男性に言葉をかける。スラリと背が高く、艶やかな黒髪、芸能人と言われても納得できてしまうほどの美貌の持ち主である。一緒に暮らし始めてかなり時間は経っているのだが、萌音は未だに彼の華やかな顔に慣れない。
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