スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~

「やることやってるなら『大人のカンケイ』ってやつかしら?兄さんは昔から、別れた後が面倒だから仕事関係の人とは恋人にならないって言ってたもの」
「そうなんですか?」

 さすがは血を分けた妹だ。知り合ったばかりの光莉とは違い、瀧澤のことには詳しかった。
 社内には瀧澤のファンも大勢いるが、結ばれる可能性がゼロともなれば少しは数が減るかもしれない。

(ん?おかしいな……)

 魚の小骨が喉に引っかかったような違和感を覚え、首を傾げる。
 まさか、パンケーキに小骨が?そんなわけあるかーいと、一人ツッコミ。

「セフレを作るなんて、兄さんもああ見えて男だったのねえ。ただれた関係なんて一番毛嫌いしそうなのに」

 露希はそう言うと、パクリとクリームを口に運んだ。

(あ、そうか……)

 仕事関係の人とは恋人にならないということは、当然のことながら光莉も対象外だ。身体の関係以上のものを期待してはいけない。たった二回、抱かれただけ。光莉にとっては価値観がひっくり返るような出来事だとしても、瀧澤にとっては数ある性交のひとつにすぎない。

「光莉、貴女はまあまあ可愛いんだから、兄さんなんてさっさと見限ってちゃんとした恋人を作るべきよ。同じヨヨヨ侍愛好家として私が手助けしてあげるわ!」

 露希はパフェを平らげ口を紙ナプキンで拭くと、光莉を上から下までじっくり眺め回した。

「まずはそのいまいちパッとしない服装とメイクを変えるべきね」

 露希と出掛けるので、いつもよりも綺麗目な服を選んで着てきたというのに……パッとしない?

「任せなさい。私は美容とメイクに関してはプロよ。ついてきなさい!」
「は、はい!」

 相手は黄金塚歌劇団という女だらけの園でトップをひた走ってきた美の最高峰だ。公園の築山以下の光莉にどう文句が言えようか。

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