一晩だけのつもりだったのに、スパダリ専務の甘い手ほどきが終わりません……なぜ?
レッスン4.なかったことにはならないの?

「いまなんじ……?」

 瀧澤から遅れること五時間。
 ようやく目を覚ました光莉は起き抜けでぼうっとしたまま、手探りでスマホを探した。
 就寝時にサイドテーブルにスマホを置くのが、マイルールだが今日はおかしい。いつものサイドテーブルの上にスマホがない。
 しかたなく寝返りを打った光莉はベッドの軋み方と、糊のついた清潔なシーツの匂いに違和感を覚えた。
 昨夜、何があったのか記憶を手繰り寄せると即座に正気を取り戻し、そのままベッドから跳ね起きる。

「うわっ!?」
 
 ベッドから下りようとして、服を身につけていないことに気がつき慌ててシーツを引き寄せた。
 見慣れたワンルームとは異なる目の前の光景に、光莉一瞬、自分がどこにいるかわからなくなった。

(あ、そうか……。私、昨日……瀧澤専務と……)

 初体験以来、二度目の相手に瀧澤を選び、そして……。
 
(ああ!もう!)

 光莉は昨夜の痴態を思い出し、再びベッドに沈んだ。
 瀧澤に男女のまぐわいのなんたるかを教え込まれた身体は心地の良い倦怠感に包まれている。
 今日が休日でよかった。色々な意味でまともに仕事が出来る気がしない。
 光莉は枕元に畳まれていたバスローブを羽織り、隣に寝ていたはずの瀧澤の姿を探した。
 メインベッドルームはおろか、リビングルーム、ゲストルーム、バスルームのどこにも瀧澤の姿が見当たらない。
 備え付けのクローゼットの中には瀧澤の服だけがない。

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