一晩だけのつもりだったのに、スパダリ専務の甘い手ほどきが終わりません……なぜ?

 あちこち探し歩いた結果、メインベッドルームに戻ってくると、ローテーブルの上に直筆のメモが置かれているのを発見した。

『ひとりで残してすまない。十日ほど上海に出張へ行ってくる。支払いは済ませてあるから気にせず寛いでくれ』

 瀧澤らしいトメハネのはっきりした綺麗な筆跡だった。

「寛ぐって……?」

 ボソリと呟いた光莉の声が、だだっ広いスイートルームに虚しく響いていく。
 昨夜は緊張でそれどころではなかったが、ひとりで泊まるにはもったいない極上のスイートルームだ。瀧澤がいないと次第に昨夜の出来事は夢か妄想だったのかと思えてくる。
 服を着る前にシャワーを浴びようとひとまずバスルームへ向かった。バスローブを脱ぎ、鏡の中の自分と見つめ合うと、思わず息を呑んだ。

(なにこれ……!?)
 
 光莉の身体には瀧澤がつけたと思しきキスマークが、あちこちに残されていた。胸元に限らず、太もももの内側にも、背中にもある。

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