出会ったのは間違いでした 〜御曹司と始める偽りのエンゲージメント〜
着替えだと差し出されたのは、スモーキーピンクのワンピースだった。実乃莉のワードローブにはない色味で、もちろん着たことはない。可愛らしいカラーだがデザインは大人のテイスト。Vネックで袖はレースになって透けていて、歩くと柔らかな生地が優しく揺れるAラインのロング丈だった。
自分がこんな素敵な服を着ていいのだろうかと少し戸惑う実乃莉に、由香は次々畳み掛けた。
着替えのあとはネイル。爪は整えるくらいでマニキュアすらしたことがなかった爪は、控えめだが衣装に合わせて可愛らしい桜色と白のグラデーションで染まった。
そのあとはメイク。普段は最低限のメイクしかしない実乃莉だが、今はモデルにでもなったように華やかに彩られている。
そして最後に髪をハーフアップに結い上げると、由香の満足そうな笑顔が鏡に映った。
「どう? 我ながらいい仕事したぁ! って思ってるんだけど」
肩にかかっていたケープを取り払いながら由香は尋ねる。鏡に映る自分がまるで別の人のようで、実乃莉はしばし言葉もなく眺めていた。
(こんなに……変われるの……?)
龍と初めて会った日もいつもと違う自分だった。あの日はただ、いつもとは全く違う姿を目指した結果ああなった。けれど今は、ちゃんと自分自身を活かしてくれている。違う自分ではなく、新たな自分を発見した気分だった。
「あっ、ありがとうございます。本当に素敵です」
「どういたしまして。楽しかったわ。にしても、龍ちゃんがどんな顔するか楽しみだなぁ」
龍は今この場にはいない。実乃莉が着替えて戻ると、龍が外出したことを聞かされたのだった。
(龍さん……何か言ってくれるかな……)
ほんの少しだけでも褒めてもらえたら、と実乃莉は淡い期待を寄せる。それだけで、何より良い思い出になりそうだから。
(それにしても……。こんな格好でどこへ行くのかな?)
龍は実乃莉の足を心配して、あまり歩き回らないつもりのようだった。けれどさすがにこんな装いにしてもらって、ただドライブして帰るというのも腑に落ちない。
ソファに座り悶々とそんなことを考えていると、窓の外に龍の車が入ってくるのが見えた。
「あ。帰ってきた」
由香はワクワクしたように声を上げる。実乃莉は緊張を押さえるように胸に手を当てた。
「待たせたな」
入ってきた龍を見て実乃莉の心臓はドキリと跳ねる。そのまま実乃莉は、グレーのスリーピースを纏った龍に見惚れてしまっていた。
自分がこんな素敵な服を着ていいのだろうかと少し戸惑う実乃莉に、由香は次々畳み掛けた。
着替えのあとはネイル。爪は整えるくらいでマニキュアすらしたことがなかった爪は、控えめだが衣装に合わせて可愛らしい桜色と白のグラデーションで染まった。
そのあとはメイク。普段は最低限のメイクしかしない実乃莉だが、今はモデルにでもなったように華やかに彩られている。
そして最後に髪をハーフアップに結い上げると、由香の満足そうな笑顔が鏡に映った。
「どう? 我ながらいい仕事したぁ! って思ってるんだけど」
肩にかかっていたケープを取り払いながら由香は尋ねる。鏡に映る自分がまるで別の人のようで、実乃莉はしばし言葉もなく眺めていた。
(こんなに……変われるの……?)
龍と初めて会った日もいつもと違う自分だった。あの日はただ、いつもとは全く違う姿を目指した結果ああなった。けれど今は、ちゃんと自分自身を活かしてくれている。違う自分ではなく、新たな自分を発見した気分だった。
「あっ、ありがとうございます。本当に素敵です」
「どういたしまして。楽しかったわ。にしても、龍ちゃんがどんな顔するか楽しみだなぁ」
龍は今この場にはいない。実乃莉が着替えて戻ると、龍が外出したことを聞かされたのだった。
(龍さん……何か言ってくれるかな……)
ほんの少しだけでも褒めてもらえたら、と実乃莉は淡い期待を寄せる。それだけで、何より良い思い出になりそうだから。
(それにしても……。こんな格好でどこへ行くのかな?)
龍は実乃莉の足を心配して、あまり歩き回らないつもりのようだった。けれどさすがにこんな装いにしてもらって、ただドライブして帰るというのも腑に落ちない。
ソファに座り悶々とそんなことを考えていると、窓の外に龍の車が入ってくるのが見えた。
「あ。帰ってきた」
由香はワクワクしたように声を上げる。実乃莉は緊張を押さえるように胸に手を当てた。
「待たせたな」
入ってきた龍を見て実乃莉の心臓はドキリと跳ねる。そのまま実乃莉は、グレーのスリーピースを纏った龍に見惚れてしまっていた。