愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
 ただの花泥棒と侮るなかれ。
 植物を愛する妖精の国である中央の国において、植物を盗むという行為は大罪である。
 特に、中央の国で人が育てた植物には特別な力が付加されるため、口酸っぱく言われるらしい。

 箱庭で育てられた植物は、大事にされればされた分だけ恩返しをしようとする。
 その恩返しの方法というのが、植物を贈った人を好きになるように暗示をかけるというものなのだ。

 その効果は、摘んだ人物に与えられる。
 例えるならば、ペリウィンクルが育てた花をローズマリーが切り、それをソレルへ贈った場合、ローズマリーがソレルに好かれるといった具合だ。

 妖精魔法のような魅了の効果はないものの、ささやかなおまじない程度の効果はある。
 数をこなせば、それなりの効果を得られるだろう。
 そう、ニゲラのような女性に慣れていない筋肉馬鹿には、特に効果的なはずだ。

(ああ、嫌な予感しかしない)

 ニゲラルートの悪役令嬢は、男装の麗人、サントリナ。
 婚約者が男のような身なりをしているため、ニゲラは女性らしいヒロインに惚れていく──と、そんな流れだったはずだ。
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