愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
「中央の国に幽霊がいないわけでもないが……あれは幽霊はないな」

 幽霊ではない。
 そう断言した途端にパッと離れてしまった手を残念に思いながら、ヴィアベルはペリウィンクルから闇にうごめく人影へ視線を移した。

「じゃあ、何?」

「人だ。後ろめたいことをしているのだろう」

「後ろめたいこと?」

 うっすらと煙るような闇の中でも、妖精であるヴィアベルの目はよく見えた。
 彼の視線の先では、一人の少女が人目を気にしながら何かを作っている。
 液体が入った容器に数種類の何かを入れて混ぜ、小瓶からエキスのようなものを垂らす。
 夜風に吹かれて漂ってきた香りに、ヴィアベルは「ふむ」と思案した。
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