愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!

第35話 ペリウィンクルの初恋

 妖精王の茶会の準備をする数日の間、ペリウィンクルは散々だった。
 適切な温度に湯を沸かせない。大切なハーブを床にぶちまける。茶器を割る。
 そんな調子だから、ブレンドするハーブについて熟考することもままならなかった。

 あまりのひどさにローズマリーが心配するほどで、

「どうしたの? 風邪? お茶を入れてあげるから、それを飲んで休んでいなさい」

 と、免疫力を高めるエキナセアのお茶を飲まされ、ベッドへ押し込まれる日もあった。

 失敗してしまう理由はわかっている。
 ペリウィンクルは、あの夜に囚われているのだ。

 それは、気づくとスッと頭の片隅にやってきて、無遠慮に座り込んでいる。
 考え事をしているあいだのちょっとした間とか、湯を沸かそうとしている時、ハーブを出している時、茶葉を蒸らしている時といった無の時間にひょいと顔を覗かせては、ペリウィンクルの心を乱していく。
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