愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
「あら?」

 気配を感じてセリが顔を上げると、ある令嬢と目が合った。
 校内を散策していたらしい彼女は、声もなく泣くセリを見て、驚いた顔をする。
 しかしすぐに駆け寄ってくると、ポケットからハンカチを取り出して握らせてきた。

「大丈夫?」

 最初はヴィヴァルディ語で。
 しかし、セリの容姿からルジャ人だと気づいたのだろう。流暢なルジャ語で声をかけてきた。

「大丈夫……」

「ではないわよね? だって、そんなに泣いているのだもの」

 寄り添うように隣へ腰を下ろした彼女は、セリの背を優しく撫でた。
 お人形のようにかわいらしい容姿をしているからだろうか。
 少女がどことなくシナモンと似ているような気がして、セリは無自覚に体を強張らせる。
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