愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
 涙と嗚咽でなかなか声に出せないセリを、ローズマリーは辛抱強く待ち続けてくれた。
 つっかえながら、なんとか先ほどあった出来事を話す。
 うまく話せた自信はなかった。だって、セリは今も訳がわからないままだったから。

 それでもローズマリーは、話を聞いてくれた。
 なんて優しい人だろう。初対面であるにもかかわらず、とても真摯に接してくれる。
 失恋したばかりの心に、ローズマリーの優しさが滲みた。

「なんで、そないに優しゅうしてくれるのですか……?」

「実はね……わたくし、あなたとお友達になりたくて探していたの」

「私と?」

「ええ、あなたと。もしもお友達になってくれるのなら、きっと力になると誓いますわ」

 あんなクソアマにセリ様が泣かされるなんて許さない──と、ヴィヴァルディ語で聞こえた気がしたが、きっと気のせいだ。
 お人形のようにかわいらしい彼女が、そんな汚い言葉を使うはずがない。

 セリは差し出された小さな手を握り返しながら、まだ混乱しているせいだと思うことにした。
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