愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
「今の私は気分が良い。少しばかり、手を貸してやろう」

「手を貸すって……何をしてくれるの?」

 親離れを決意しながら、打開策が見つからないせいでついつい甘えてしまう。
 そんな自分に呆れながらも、ペリウィンクルは藁にもすがる思いで顔を上げた。

 顔を上げたペリウィンクルの、ブラックオパールのような目と目が合う。
 真っ黒のようでいて何色か混ざっているような不思議な色をした目だ。純真無垢な色をしたそれに、腹が立つこともあるのだが、何も知らないからこそ教えがいがあるものだとヴィアベルは思った。

「半月後の三日月の夜、学校の南にあるガゼボへセリを連れておいで。月見と洒落込もうではないか」

「月見? そんなことをしている場合じゃないんだけど」

「そんなこととは失敬な。セリの初恋を実らせたいのだろう? 私の言うことを聞いておけ」
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