愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
 実のところ、ペリウィンクルは月見の茶会で何があったのか、よく知らなかった。

 月見の茶会を開いたあの晩。
 ペリウィンクルがしたことといえば、やって来たセリとシナモンをガゼボへ案内し、セントジョンズワートの茶を振る舞ったことだけ。たった、それだけだ。

 それ以降のことはヴィアベルと、当人たちにしかわからない。
 どうしてそんなことになっているのかと言えば、ペリウィンクルが眠ってしまったからである。

 庭師であるペリウィンクルは、早寝早起きが習慣づいている。
 もともと夜遅くまで起きているのが苦手な上に、茶会の準備で疲れていたこともあって、茶を振る舞ってやることがなくなったら、眠くなってしまったのだ。
 漏れ出る欠伸を必死に噛み殺していたものの、眠気は容赦なく襲いかかってくる。

「仕方がないな。あとは任せておけ」

 お子ちゃまめ、と笑ったヴィアベルの大きな手が、ペリウィンクルの視界を遮る。

「子供じゃない、もん……」

「こんな時間に眠くなるのは子供だろう」
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