聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!


帰宅後、風呂から上がり、自分の部屋に入った菜々は、また矢嶋のアイコンを見つめていた。


――そう言えば、ネット記事に載ってるって言ってたよね。


インターハイ陸上、とスマホの検索画面に入力する。


すると、すぐに記事が出てきた。


矢嶋が、トロフィーと賞状を持ち、首にはメダルをかけた写真が出てきた。


嬉しそうに、クシャッと笑う矢嶋。


――すごいな、先輩。


優勝なんて、簡単にできるものではない。それは、サッカー部の応援をしている時にもそう思った。


いつもあんなに頑張っているのに、負けるなんて。


準決勝敗退。部員達が負けた悔しさで泣いている傍ら、菜々も神崎と一緒に泣いた。


頑張っていても、簡単には乗り越えられない壁があるのを感じた。


矢嶋はそれを越えて行って、優勝を勝ち取った。


ネット記事に載っている、矢嶋の走る姿。嬉しそうな笑顔。


――先輩、かっこいいな。


この気持ちを伝えたくなって、菜々は矢嶋のアイコンをタップし、トーク画面を開いた。

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