推しの歌い手さま~想像してたのと違うんだが…~
航太が戻ってくると机に置いてあった遊園地のチケットを、大切そうに両手で持って立ち上がる穂香。


穂香「しし……しゅ……しゅうぎょ……終業式……」


穂香は可愛く言おうとして、緊張してしまいおかしな事になってしまう。

そこへ亜美がすかさずやって来て、穂香の背中をポンッと叩いた。


亜美「緊張しすぎだよ~。終業式終わったら一緒に行こうね?でしょ?」


穂香は苦笑いしながら、二人のやり取りをぼんやりとした目で見ている航太に言った。


穂香「終業式終わったら一緒に行こうね?」


航太はクールな感じで「わかった」とだけ言って席につくと、また机に伏せてしまう。


航太「はぁ……疲れた……俺も頑張った……自分を褒めてあげたい……」


穂香はそんな航太の姿を微笑ましく見ていた。


穂香(航太くんだって勇気を出して言ってくれたんだよね?ごめんね……すぐに気付かなくて……)


穂香は人生で初めてのデート。どんな服を着ていけばいいのか?
どんな髪型にすればいいのか?

少しでも可愛く見られたいと考えている時に、ある事を思い出した。

リュウが髪の毛を切ってくれるという話だ。

リュウと連絡先を交換したものの、穂香は返事は返していない。


穂香(あぁ……リュウさんと連絡取ってないな……?
今度髪の毛を切ってもらおう。って思ったけど、ナンパで知り合った10歳も年上の人を、友達としては見れないもん……
今日の夜、SNSで連絡してみよっと)


(7月中旬。朝の教室。終了)



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